理事長メッセージ教育理念学園の沿革役員等の氏名財務状況
HOME > 理事長メッセージ
親和中学校・親和女子高等学校神戸親和女子大学神戸親和女子大学附属幼稚園
理事長メッセージ

新年のごあいさつ

理事長

明けましておめでとうございます。謹んで新年のごあいさつを申し上げます。
 平素は、親和学園の教育研究にご理解とご支援をたまわりありがとうございます。とくに、昨年は、学園創立130周年記念式典・音楽会・祝賀会等々の開催に際しまして、多くの方々にたいへんお世話になりました。心より感謝とお礼を申し上げます。今年も引き続きご支援のほどよろしくお願い申し上げます。
 さて、少子高齢化の進行、テクノロジーの革新、そして、グローバル化の波。社会は、私たちの予測を越えて、加速度的に変化を速めつつあります。よく言われるように、マルチ・ハイスピードな時代になりました。そして、不安定で、不確かで、先の読めない時代になりました。
 まず、少子高齢化についてですが、私事ながら、昨年からある本を読んでいるところです。ご存知の方も多いと思いますが、リンダ・グラットンの「ライフ・シフト」(池村千秋訳、東洋経済新報社、2016年)です。ここでは詳しく述べられませんが、「ライフ・シフト」には、結構、ショッキングな言説があります。冒頭の「日本語版への序文」でグラットンは次のように述べているのです。
 「国連の推計によれば、2050年までに、日本の100歳以上人口は100万人を突破する見込みだ。・・・2007年に日本で生まれた子どもの半分は、107年以上生きることが予想される。」(同上書、1ページ)
 もちろん、本論を読み進んでいくとすぐ分かることですが、日本の子どもたちだけがそこまで長生きするというのではありません。そこでは「いま先進国で生まれる子どもは、50%を上回る確率で105歳以上生きる。」(同上書、18ページ)と述べられていますから。
 グラットンのこの書から「人生100年時代」という言葉は一般的になりました。(ちなみに翻訳書の「ライフ・シフト」のサブタイトルは「100年時代の人生戦略」となっている。)また、政府には「人生100年時代構想会議」という会議さえ設置されています。そして、興味深いことに、グラットンもその会議のメンバーになっています。
 グラットンは、少子化よりも高齢化に焦点を当てて論述していますが、私たち教育関係者は、概していえば、少子化の方に大きな関心を持っています。しかし、グラットンは、歴史が初めて経験する長寿の社会では、日本が世界の先頭を走っており、ほかの国のお手本になることを期待されているとさえ言っています。とくに、グラットンは人生を「教育(第1ステージ)」、「仕事(第2ステージ)」、そして「引退(第3ステージ)」に分け、これから到来する長寿社会は、当然、これらの3つのステージを根本的に変えていくと言います。単に第2ステージの働き方の改革だけでなく、最初のステージである教育の目的・内容の在り方についても、変革を迫るものだと言います。「100年ライフが当たり前になれば、人生の早い時期に一度にまとめて知識を身につける時代は終わるかもしれない。・・・キャリア時代の初期に身につけた専門技能を頼りに長い勤労時代を生き抜けるとは考えにくい。テクノロジーの進化によりスキルが時代遅れになったりする結果、生涯を通して新しいスキルと専門技能を獲得し続けることが一般的になるだろう。」(同上書、130〜131ページ)と述べ、第1ステージの教育(通常、大学までの)の限界を指摘し、「生涯を通して新しいスキルと専門技能を獲得し続ける」必要性を説くのです。
 さらに、これからは「人間ならではのスキルと共感能力」、「思考の柔軟性と敏捷性」、「イノベーション能力と創造性」等を育成する教育が重要性を増すだろうと指摘しています。ある意味では、教育本来の在りように戻るべきとの意見のようにも思えます。
 ほかにも、教育は急速なグローバル化によっても大きな影響を受けています。たとえば、数年前から英語を駆使して世界を舞台に活躍できるグローバル人材の育成が大きな教育課題としてクローズアップされ、そういう流れの中で教育の重心が英語力の育成に移りつつあるようにも見えます。小学校での英語教育、英語の4技能を問う大学入試制の導入も決まりました。
 世界に比べて、英語の面で余りに遅れをとっている日本として分からないことはありませんが、グローバル教育については、基本は押さえておく必要があると思います。世界のグローバル化にとって要請されていることは、もっと本質的なことで、シーナ・アイエンガーのいう「文化的知性」、すなわち、世界のさまざまな国の人々とその文化を互いに理解し合いそれらに共感し、さまざまな分野で、共に協働する知性だと思っています。そういう協働的な知性を養成することが、グローバル社会に対応する教育の中心になるべきだと思います。もちろん、「文化的知性」と「英語力」の養成を二律背反で考える必要はないとも思っています。海外に留学して英語力を鍛え「文化的知性」を磨くことが、現実的と言えるでしょう。
 このような現状認識に立つと、私たちは、少子高齢化、テクノロジーの革新、グローバル化の進行等々の外部要因によって、教育の大変革を迫られています。これが、私たちの状況ではないでしょうか。とりわけ、少子化の進行は、近年、直接的に学校経営に影響を及ぼしています。3年前、生まれた赤ちゃんの数が、ついに100万人を切ったと思ったら、一昨年は96万人だと発表されました。まさに正念場に置かれているのが、私たちの現状であると思います。
 私たちは、このように多面的に厳しい状況に対して短期的な処方箋も中長期的な処方箋も必要ですが、その前に、私たちがどのような視座に立ち、未来に向かって次なる処方箋を講じるのか。まず、そのことを考えなければならないと思います。
 話を少し変えさせていただきます。
 親和学園では、昨年、学園創立130周年を記念して、「校祖友國晴子特集」を編纂しました。その趣旨は、校祖の生涯と親和の歩みを辿り、親和教育の原点を確認すること、そして、現在の急速に変化する社会において、今後、親和学園の未来をどう切り拓いていくのか、そのための視座を得ることでした。
 その結果、私たちが得た視座の一つは、親和教育の理念は「子どもたちと社会と共に歩む」というものでした。子どもたちひとり一人と誠実に向かい合うことで日々の教育に専心するとともに、社会の変容に前向きに対応し、社会のさらなる発展に貢献するというものでした。校祖友國晴子(1858〜1925)は、明治の時代でありながら、すでに親和女学校に英語を必修科目として置き、ネイティブのイギリス人に担当させていました。校祖は、江戸・明治・大正という動乱の時代を生き抜き、獅子奮迅の働きで、幾多の艱難を乗り越え、現在の親和学園の確たる基礎を築きましたが、その揺るぎない信念は、社会の発展動向を視野に、日々の教育活動を通じて、社会に貢献し、社会と共に発展するというものでした。
 社会との関係の在り方について、私が校祖の生き方から学んだことは、校祖が社会の変化に迫られて対応したのではなく、変化を読み主体的に未来を創造していった、という点です。

 さて、少子高齢化の進行、テクノロジーの革新、グローバル化の進展という3つの変化に対して、どう対応するのかという問いに対する私たちの最初の回答は、「子どもと社会と共に歩む」という理念を基本的な視座とする、というものです。
 さらに、私たちが校祖から学んだことは、困難な状況のもとで時代を越える新たな教育的価値を創造するためには、教職員の「ネットワーク力」(さらにいえば、保護者・同窓生も含めたネットワーク)と、そしてそれに支えられた組織力が必要だ、ということでした。校祖は、明治・大正の激動の時代を教職員・保護者・地域の人々との強固なネットワークによって乗り越えていきました。第2の回答は「ネットワーク」による「協働」よって未来を創造するというものです。「ネットワーク」について付言すると、テクノロジーの目覚ましい革新により、かつてない広範囲かつハイスピードな「ネットワーク」が可能になりました。教育においても、バーチャルなネットワークにより新しい価値やアイデアが創出される可能性が一気に高まると思います。ちなみに、先のグラットンは「ビッグアイデア・クラウド」という「ネットワーク」の意義について詳しく説明しています。(池村千秋訳「ワーク・シフト」プレジデント社、2012年)

 これまで、急速に変化する社会と、その変化にどのように対応すべきかについて述べてきましたが、親和学園もかつてない厳しい時代環境に置かれています。改めて建学の理念を確認し、そこに時代が要請する新たな教育的価値を付与しつつ、教職員がネットワークを編成しチームとなって、日々の教育活動に専心したいと思っています。私たちはいつまでも社会と共に未来を創造する努力を続けていく所存です。親和学園に対してますますのご理解とご支援をお願い申し上げて、新年のごあいさつとさせていただきます。

 年始のごあいさつとしては、異例の内容となりましたが、私の所信を詳しくお話ししご理解を得たいためでした。ご容赦をお願いいたします。

 終わりになりましたが、みなさまにとりまして、今年が良い年となりますよう祈念申し上げます。

追記
今年から、学園のホームページにおいて、適宜(1か月に1度程度)、私の教育や経営に関する考えを説明させていただきたいと思っています。よろしくお願い申し上げます。

2018年 元旦
学校法人親和学園 理事長  山根 耕平




〒657-0022 神戸市灘区土山町6番1号 学校法人 親和学園